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最高裁判所第二小法廷 昭和41年(行ツ)23号 判決 1967年4月07日

上告人

金元植

被上告人

警視庁浅草警察署

右代表者署長警視庁警視

青木葉贇

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

上告人が捜査開始前にした本件被害の届出は、刑事訴訟上の捜査の事実上の端緒となるに止まり、右届出に基づいて捜査機関がした捜査上の行為は、刑事訴訟上の行為である。そして、行政訴訟および民事訴訟とは別個に刑事訴訟を認めるわが国の法制の下においては、右捜査機関がした捜査上の行為に対し行政訴訟または民事訴訟を提起して、これによつて、その当否を争うことは許されないものと解すべきである。されば、上告人の本訴請求はそれ自体不適法であるとした原判決は、所論はない。

原判決が、上告人は本訴を提起するについて法律上の利益を有しない旨判示したのは、本来必要のない理由を附加したに止まるのであつて、その判断の当否は、原判決の結果に影響を及ぼすものではないから、この点に関する所論も採るを得ない。

上告人の本訴請求がそれ自体不適法であることは、すでに説示したとおりであるから、上告人の請求の内容の当否についてまで判断しなかつた原判決には、所論の違法はない。

また、上告人が原審において所論の準備書面を陳述していないことは、本件記録に徴し明らかであるから、原判決がこの点について判断しなかつたのは、当然である。

したがつて、論旨は、すべて理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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